特許法院 宣告 2018ホ3925 判決
造血癌(造血器悪性腫瘍)および増殖性疾患の治療のための固定薬の比率(出願人:セラトパーマシューティカルズ、インコーポレイテッテッド)に関する医薬用途に対する特許出願の請求項第1項で「組成物の投与用量、投与用法を患者に8時間以内に静脈内投与して32-134㎎/㎡のシタラビンを提供し、第1日の第1投与段階、第3日の第2投与段階及び第5日の第3投与段階に限定」している点の進歩性を認めるかどうかが問題になった事例です。
特許法院は、第1項の発明の投与用量と投与用法は、シタラビン対ダウノルビシンの薬理効果が完全に維持され、毒性や副作用を最小限にすると予測することができる範囲を逸脱しないようにみられるので、通常の技術者がそのように予測される範囲内で、当然経なければなら臨床試験の過程を介して、第1項の発明で特定した投与用量、投与用法を導出するにおいて特別な困難がないとするのが妥当であり、公知の医薬物質の薬理効果は、完全に維持して投薬の利便性を向上しながら、毒性や副作用が表れないように投与用量や投与用法を探し出すことは、この分野の通常の技術者によく知られていることで、投与用量、投与周期などの投与方法を最適化することは、原則として通常の創作能力の範囲内に属すると判示しました。
また、第1項の発明が特定している「32-134㎎/㎡シタラビン」の範囲と「1日、3日および5日」の投与周期で表われる効果が、通常の技術者が予測できなかった顕著または異質的なものとみることが難しいと判断しました。
特定の投与用法と投与用量に関する用途発明の進歩性が否定されないためには、出願当時の技術水準や公知技術等に照らして、その発明の属する技術分野における通常の知識を有した者が予測できない顕著な、または異質の効果が認められる必要があります。
検討してみると、たとえ投与用法/投与用量が発明の構成要素として認められるとしても、臨床試験で通常行われる好適な投与用法/投与用量を導出することは、その効果が通常の技術者が予測し難い程度に顕著であったり異質な効果がない限り、進歩性がないことを判示した点に注目する必要があります。但し、同じ用途が知られている物質の経皮投与用途に関しては、進歩性があると判断した最高裁の判決に照らしてみると、投与用法/投与用量の進歩性の認識と関連して、どの程度が通常の創作能力の範囲であるかについては、特許法院や最高裁の個々の判断を継続的に調べる必要があります。